日本では、同じ中国の料理を提供している店でも、屋号の頭に「中国料理」と「中華料理」を名乗る店舗があります。 厳密な区別をしているとは限らないので、言い切るのは無理がありますが、何が違うのかというと、「中国料理」は、原則的に中国の料理をそのまま提供しているお店で、「中華料理」は、中国伝来の料理を日本人向けにアレンジしたり、発想だけをベースにして創作、進化した料理を提供するお店という分け方が妥当かも知れません。 基本的に、中国料理で出される料理は、どれも単品だけで成り立つものでは無く、数種類の料理(スープ・肉・魚・点心類など)をオーダーして、それぞれの味を楽しみ、トータルで食事として成立するもの。 対して、中華料理では、餃子、回鍋肉、青椒肉絲、麻婆豆腐などを御飯のおかずとして食べる。又、炒飯や天津飯、中華丼、ラーメンなど、単品で一食の食事が成り立つ形で提供されるという分け方も出来るかと思います。
中国伝来の料理と言っても、そのままでは、繊細で比較的刺激の少ない味に馴染んで来た日本人には合わない料理が多かったため、それらの特徴や素材、調理法を活かしながら、独自の形に仕上げて来たのが、現在の中華料理と言えます。 特に、主食である米との相性を重視し、おかずとして、また、一品で一食の食事が採れるようにさらに、美味しさも追求してきた結果、おかずにしろ、単品にしろ、野菜・肉・魚・穀類・果実の旨味と栄養素を備えた料理として発達を遂げてきました。 国民食のひとつとされるラーメンでさえ、味の決め手でもあるスープには、野菜や肉、魚、フルーツなどの旨味と共に栄養素が溶け込み、独自の美味しさを実現しています。 和食を始め、フランス、イタリアなど、どの料理も素晴らしい伝統と技術に裏打ちされたものではありますが、これほど多くの旨味と栄養素を、ひとつの料理に閉じ込めた分野は他になく、そうした意味で、中華料理は「優れたバランス栄養食」なのです。
同じ料理名でも日本と中国では大きく異なる例もあります。その典型例が「酢豚」(日本固有の名称ですが)です。日本では、豚肉の他に多くのカラフルな野菜を入れたものがお馴染みですが、中国では「水っぽくなる」として野菜は入れず、豚肉のみの料理として提供されます。 また、日本では「餃子」と言えば焼き餃子を指しますが、中国では水餃子を指し、主食として食べられます。因みに、中国で拉麺とは「伸ばした麺」を指し、ラーメンと言えば日本のものという感覚で捉えられています。
中国陝西省西安で切麺という麺を作る手法が誕生します。粉と水を混ぜた生地をこねたものを削るように切りながら、お湯に直接入れていく技法です。「刀削麺」のルーツです。刀削麺は、独特な製法から全体は柳の葉の形になり、また断面は三角形になって独特の食感を生み出します。麺を削るには手際のよさと、麺を長く均質に削る技術が必要であり、熟練した技術が必要です。 一方、「うどん」も小麦粉、水と塩だけで作るがゆえに、作る人の技術により強いコシを出すには卓越した技術が必要です。ルーツには諸説ありますが、空海が唐から持ち帰った小麦粉に餡子を入れて煮た唐菓子「混沌(こんとん)」ではないかといわれています。それが「検飩(けんとん)」となり、熱いうちに食べるものだから「温飩(おんとん)」となり、それが転じて「饂飩(うんとん)」となり現在の「うどん」になったいう説があります。 空海が9世紀初頭に遣唐使として渡り密教の奥義を師・恵果から教わった青龍寺があるのが西安(当時の長安)。 刀削麺の発祥も西安。そこでこうは考えられないでしょうか。うどんのルーツは空海が修行中に食べた刀削麺を日本で伝えたことが始まりではないかと…。 “うどん県”と中国料理の浪漫あふれる歴史に思いを馳せながら、刀削麺を味わってみてはいかがでしょうか。
日本で味わえる中国各地の料理。その特徴と、その代表的な料理をご紹介します。 広大な国土と、4千年を超える歴史に育まれた中華料理の種類は多岐にわたりますが、その味は「南淡北咸・東甜西辣」(南は薄く、北は塩辛く、東は甘く、西は辛い)が基本といわれています。日本では最初に上海料理が普及し、徐々に他の料理も普及して行きました。
広東料理は、長江の南地方料理の総称です。幅広い食材を用い、淡白な味付けで、素材を活かす調理法が好まれ、油分も少なく、日本人の口に合うため、人気の高い料理のひとつです。「食は広州に在り」ともいわれるほど、食材の種類が豊富で、使う素材の鮮度にこだわりを持っている点が特徴です。
川、湖、海と魚介類の宝庫で、新鮮な魚介類を活かした料理が多い。温暖な気候で、米、酒、味噌の産地の為、醤油味で、こってりと甘いもの、あんかけが多いのが特徴です。 コースでは、日本でも人気の高い上海ガニをはじめ、淡水魚などの魚介類がメイン・ディッシュとされることが多く、料理の種類も豊富です。田ウナギ、スッポン、カワメバルなど、長江流域で捕れるユニークな魚介類料理を味わうこともできます。
蒸し暑い盆地にある、四川を中心とした西南地方の料理です。辛味と酸味が利いているのが特徴です。四川料理の味は、胡椒や山椒などの痺れるような辛さ「麻(まー)」、唐辛子の辛さ「辣(らー)」、酸味「酸(すー)」、スパイス「香(しゅん)」の4つが味の基本とされています。 本場の四川料理は、極めて辛いものが多いのですが、日本では、麻・辣の要素を抑えることで、適度な辛味に仕上げているお店が多く見られます。
黄河流域以北の料理を集大成した料理の総称です。山東地方の料理を土台に、北方民族料理や宮廷料理の伝統を受け継いでいます。寒い地方の為、鍋や味噌料理、肉料理が多く、また、うどん、肉まん、餃子等、小麦粉をうまく使った軽食メニューが豊富で、味付けには油がふんだんに使われ、塩味が強いのが特徴です。 中でも“北京ダック”は、非常に人気のあるメニューです。
中国の福建省の郷土料理に由来しています。薬膳料理等、以形補形(イシンプシン)がモットーです。淡白な味付けで汁気の多い料理が多いのが特徴です。特に、屋台料理が有名で、ビーフンを使った麺料理や、豆乳を使った料理が代表的なものと言えます。
北京など中国の北方では、正月に餃子を食べるのが習わし(日本と違い、餃子と言えば水餃子を指します)。 年越しに餃子という習慣は明の時代ごろから始まったと言われます。 「餃」は中国語で「交」と同じ読み方で、喜び、団欒、縁起が良いという意味を表します。また、餃子の形が「元宝銭」(昔の貨幣)に似ていることから、餃子を食べるのは富をもたらすとして縁起が良いとされます。昔は餃子を作る時、餡に硬貨を入れ、当たると金運に恵まれるとされました。衛生面から、現代ではナツメや落花生、栗の実などを入れます。栗とナツメは一本の木で沢山の実がなる=子宝に恵まれ幸せな日々を送ることができる。落花生は長寿を象徴する=健康長寿に恵まれるとされます。 こうしたことから派生して、誕生日や記念日、祭事、祝宴など、御祝いの席でも、水餃子を食べる習慣が定着しています。 全中連では、こうした慣習を日本でも取り入れ、健康と幸せを願う象徴として、「歓びの日には、水餃子を食べて幸せになろう!」キャンペーンを展開しています。 御飯を主食とする日本では、残り物の水餃子を焼いて食べた「焼き餃子」が、おかずに適していたことから、こちらの方が普及し、国民的食品として愛されています。美味なだけでなく、様々なシーンで使える食品として、欧米諸国でも、注目を集めていますが、お祝いの日には、中国の故事に習い、幸せな日々を願って、水餃子を召し上がってはいかがでしょう。
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